馬飼野俊一

大衆音楽の殿堂入り(作曲・編曲)


2023年2月1日にUniversal Musicより発売された「雨の空港 / 父さんのウィスキー」を聴いて

「雨の空港」は、「なぜか悲しい」の出だしの歌詞の通り、とても悲しい曲調で、切ない女性の心情が手に取るように伝わってきます。具体的には、傘をさしてゲートを見つめている女性の悲しい横顔が目に浮かんできます。

1コーラス目の最後の歌詞「あなたへの街へ」、2コーラス目の最後の歌詞「忘れて欲しい」、3コーラス目の「返して欲しい」は、彼氏への募る思いが一気に高まっていくようで、哀愁漂う切ない想いに耐えきれない気持ちになります。

「父さんのウィスキー」のイントロは青春模様が伝わってくる昭和歌謡風の曲調に似ていて懐かしさを感じます。
のどかな出だしはほんわか心がほぐれます。
1コーラス目の「母さんの」と「話は笑顔で」の間、
2コーラス目の「よりそえず」と「何度も喧嘩を」の間、
3コーラス目の「母さんと」と「いまごろ話して」の間は、音がグルグルと回って翻っているように感じますが、次の段階への大きな弾みになっていて、高揚感が増します。
最後の歌詞の盛り上がりのタンタンがとても心地よいです。
全体的に柔らかく、優しく、そっと語りかけているように感じます。

両曲とも、歌詞がわかりやすいので、感情が入り込みやすいです。

私の母が3年前に亡くなり、父が昨年7月に亡くなったので、「父さんのウイスキー」は重なるものがあります。私の父はウイスキーではなく、缶ビールが好きでしたが、ときどきは両親はあの世で元気でいるのかなと思うときがあります。

作品が輝くか否かは歌い手さんの歌唱力によるところも大きいと思います。
おそらく編曲者は、歌い手さんの声質や声の出し方などを把握した上でアレンジしておられると思います。
「雨の空港」は、マイナー3連リズムのバラード歌謡曲で、曲のいたるところに微妙に繊細なアレンジが施されているのが分かります。
本当に悲しくて切ない思いが醸しだされているのは、そのきめの細かいアレンジの賜だと思います。

投稿:2023年2月11日
シンガープロ 安藤秀樹

雨の空港

作詞:岸 快生
作曲:水森英夫
編曲:馬飼野俊一

父さんのウィスキー

作詞:岸 快生
作曲:水森英夫
編曲:馬飼野俊一



馬飼野俊一

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