ねぇ神様 ぼくにキセキをください　a&k　ファーストシングル　エイフォースより2024年11月20日発売！

キセキの親子の物語　文：羽田ひふみ

70代半ばの私は孫にも恵まれ 平凡な暮らしをしていました。

今年１月に病気療養でこの病院に入院 毎日暇を持て余し せっかくなので入院生活を日記にしています。

ある日病室の廊下で元気そうに走り回る男の子を見かけました。

どことなく孫に雰囲気が似てるその子に興味を持ち自然と目で追うようになりました。

話しかけてみると 「ぼく今９歳だよ。クリスマスで10歳になるんだ」 と嬉しそうに言っていました。

その子はいつも決まった時間に窓から外を覗き込んで誰かを待ってるようでした。

間もなくして母親が病室へ入って来ました。

入院生活にも慣れ、季節は秋。

あの子ともすっかり仲良くなり病室にも遊びに来てくれます。最近は少し体調が優れないのか元気がないように感じました。

するとある人から 「あの子は今重い病気と戦っているんですよ」 という言葉にあの子の病気の重さを知り愕然としました。せめてあの子の喜ぶことをしてあげられたらと思いました。

クリスマスも近くなってきたある寒い夜。
手作りツリーがキラキラ光る病室を通りがかった時、夜空に向かって何かつぶやいてるあの子の姿が見えました。

そおっと聞き耳を立てるとかすかに聞こえてきたか細い声。

「ねぇ神様 もし命が二つあったらママに一つ分けてあげたい ママにはぼくの分も長生きしてほしいから。ぼくはママにもらった命を最後まで大事にするから。ねぇ神様、だから ぼくにキセキをください」とお願いをしていました。

クリスマスイブの夜、院内の廊下が少し騒がしく、看護師があわただしくしている姿が見えました。

そしてクリスマスの朝、あの子の誕生日。
売店で買ったハンカチをプレゼント代わりにハッピーバースデーを伝えに手作りツリーが光るあの子の病室の前に行くと、何故か窓もカーテンも閉ざされベッドはきれいに整理されていました。

あれ以来あの親子を院内で見ることはありませんでした。

私は今でもあの子にキセキが起きたと信じたい。

※ この物語は親子の絆をファンタジーに描いた作品でありフィクションです。登場人物や場所、 背景などは実在しません。