ゲンエキカオウ~歌姫~ 視聴記:選曲が明暗を分けた初代歌姫決定戦
4月19日、BSフジで放送された『ゲンエキカオウ~歌姫~』を視聴した。「日本最高の歌姫は誰か」、その初代歌姫の座をかけ、5人のメンター(審査員)による合計500点満点の熾烈な争いが繰り広げられた。
メンターを務めたのは、南野陽子、ハシヤスメ・アツコ、岩橋玄樹、竹中雄大、チェ・スホの5名。
審査方式もユニークだ。中間発表では、5名のうち「最高評価」と「最低評価」を下した2名分(計200点満点)のみを公表。その暫定順位に対し、最後に残る3名分(計300点満点)が加算される仕組みだ。一気に順位がひっくり返る可能性を秘めた、スリリングな演出が光った。
今回のTOP7はいずれもハイレベルで、誰が頂点に立っても不思議ではなかった。しかし、視聴していて感じた勝敗の分かれ目は「選曲」にあったのではないか。自身の魅力を最大限に引き出し、スケールの大きな楽曲を選んだ者に勝利の女神が微笑んだのではないだろうか。また、視聴者にとって最も印象に残るのは最後の歌唱であり、最初に出演した歌唱がどれほど素晴らしくても次第に印象は薄れていくものだ。序盤の歌唱も公平に評価すべく、その都度しっかり採点を行う形式の重要性も再認識させられた。
各出演者のパフォーマンスを振り返る。
荒川夏蓮(前回MVP)
前回最高得点の彼女が選んだのは、ちゃんみなの『ハレンチ』。メンターや他の出演者も驚く意外な選曲だった。ジャンルレスで大人びた楽曲を歌いこなす実力は見せたが、前回の勢いと比較すると、インパクトがやや控えめに映ったかもしれない。
永井愛実
eillの『フィナーレ』を熱唱。難易度の高い楽曲への挑戦だったが、彼女の華やかさや可愛らしさを活かすならば、会場全体が踊りだしたくなるような賑やかな選曲の方が、より彼女の魅力を爆発させられたのではないかと感じた。
Natalia D
シェネルの『ビリーヴ』を披露。クライマックスに向けてダイナミックに加速する歌唱力は圧巻で、残像として残るほどの強烈なインパクトを放っていた。
TAE LEE
小柳ゆきの『あなたのキスを数えましょう~You were mine~』を熱唱。力強い歌声にメンターからも「椅子から立てなくなるほど引き込まれた」と感嘆の声が漏れるほど会場を支配する圧巻のステージだった。
東亜樹
伊藤久男の『イヨマンテの夜』を披露。非の打ち所がない完璧な歌声だ。日本歌謡の神髄を伝える広大なスケールの楽曲で、最後の歌声はどこまでも伸び、力強く拳を突き上げてフィニッシュ。メンターの南野陽子氏が述べた「水を凍らせるのか、氷を割るのか溶かすのか、自由自在に操れるのではないか」という賛辞は、彼女の底知れない表現力を的確に表していた。
下北姫菜
絢香の『三日月』を熱唱。彼女の透明感ある歌声にぴったりの選曲で、一言一句が実に丁寧で心地よかった。完璧に歌い上げた自負があったであろう分、得点が伸び悩んだ際の表情には、隠しきれない悔しさがにじんでいた。
BON.井上(優勝)
Superflyの『Beautiful』を熱唱。ハツラツとして伸びやかな歌唱力は実に見事で、会場の空気を一変させた。メンターが「世界を変えてやるという熱い気持ちが伝わり、アーティストのライブを見ているようだった」と評した通り、優勝を予感させる魂のステージであった。
【演出の妙とドラマチックな結末】
番組は最後まで視聴者を引き込んだ。最終順位の発表中、4位までを告げたところで司会のカンナム氏が「3位はいません!」と宣言。一瞬の混乱ののち、2位が同点で2名いることが判明するなど、緩急のついた演出が面白い。
さらに、優勝決定直前のインタビュー。上位3名に対し「自分が優勝すると思うか」との問いに、二人が「はい」と答えるなか、東亜樹さんだけが「自分じゃないと思います」と謙虚に返答し、会場をどよめかせた。
そこからのカンナム氏の「タメ」の効いた司会ぶりは見事だ。「最終優勝者は!」と高らかに宣言し、じらしの間をたっぷり置いてから「東亜樹さん!……誰が優勝すると思いますか?」という際どいフェイントに、南野陽子氏が思わず「いい加減にしろ!」と突っ込む場面も。心臓に悪いほどドキドキさせられたが、それこそがこの番組の醍醐味だろう。
最終的に、優勝の栄冠はBON.井上さんに輝き、2位は東亜樹さんとNatalia Dさんの二人が分け合った。
順位こそついたが、このTOP7が「2026日韓歌王戦」で日本代表として戦うことに変わりはない。この最強の布陣が、次なる日韓戦の舞台で勝利をつかみ取ることを心から応援したい。
投稿:2026年4月23日
シンガープロ 安藤秀樹
