チャ・ジヨン 『鯨狩り』|2026日韓歌王フェスティバル視聴記
「査定戦・100秒戦」で見事MVPを獲得したチャ・ジヨンが、今回はミュージカルの仲間たちと共にフルバージョンのステージを準備した。会場からは「チャ・ジヨンがまた見られるとは!」と期待の声が上がる。
披露する楽曲は、韓国音楽史に残る不朽の名曲『鯨狩り』(オリジナル歌手:ソン・チャンシク)。
1970年代の韓国フォークソング界を代表する伝説的シンガーソングライター、ソン・チャンシクが1975年に発表したこの曲は、フォークソングの枠を超えた、ロックのような激しさと力強さを持つ曲だ。
出だしは「お酒を飲んで歌って踊ってみても、胸の中は悲しみでいっぱい。何をすればいいのか見回しても、見えるのは冷たい壁ばかり」という、若者の孤独や閉塞感から始まる。しかしサビになると一転、「さあ、旅立とう!東の海へ、神話のように息づく鯨を捕まえに!」と、一気に視界が開けるような力強いメッセージへと変わる。ここでいう「鯨」とは、誰もが胸に抱くべき「大きな夢」や「理想」の例えであり、息苦しい現実を飛び出そうと呼びかける魂の応援歌だ。
当時、軍事政権による厳しい言論統制や若者文化への弾圧があった韓国において、この曲は一世を風靡した青春映画『愚か者たちの行進』の挿入歌として大ヒットしたものの、政府によって放送禁止曲に指定されてしまった。しかし、公に流せなくなっても若者たちは大学のキャンパスや街中で歌い継ぎ、彼らにとっての「抵抗と自由のシンボル」となった。解禁された現在は、世代を超えた国民的ソングとして、ジャンルを問わず数多くの実力派アーティストにカバーされ続けている。
激しい時代を生き抜いてきた名曲に、チャ・ジヨンは「巨大な筆による一筆書き」という圧倒的なパフォーマンスで挑んだ。
ステージに登場した彼女は、迷いなく一気に巨大な筆を振り下ろす。クジラの滑らかな曲線、丸みのある大きな頭部から細くなる尾ひれへのつながり、そして「潮吹き」や「胸ひれ」のバランスをステージ上で一瞬の迷いもなく描ききる姿は、観客の胸を打つ圧倒的な迫力だ。この巨大な筆のパフォーマンスは、曲が持つ「常識を打ち破る熱いエネルギー」という視覚的メッセージそのものであった。
入魂の一筆書きで『鯨』を描き上げ、巨大な筆を静かに床に置いたその瞬間、チャ・ジヨンは魂の叫びのような歌声を一気に解き放った。「鯨を狩りに行くぞ!」と雄叫びを上げるその一撃に、観客の心は一瞬で撃ち抜かれる。
驚かされるのは、高度な映像技術との組み合わせだ。チャ・ジヨンが巨大な筆を後方へ大きく払うと、その動きにピタリと合わせて、背景の巨大スクリーンに本物の墨汁が飛び散ったかのような黒い墨がパッと一気に広がる。リアルな筆の動きとデジタル映像が見事に一体となり、ステージの奥行きを無限に広げていく。
ステージの盛り上がりが最高潮に達すると、先の査定戦・100秒戦にも登場したミュージカル『西便制(ソピョンジェ)』チームのダンサー10人が登場。伝統的な韓服を思わせる、袖の広がった純白の衣装をまとったダンサーたちが、一糸乱れぬダイナミックな群舞で激しくターンを決める。数人のダンサーが身をかがめて土台となり、その上にチャ・ジヨンが圧倒的なオーラを放ちながら立つと、まるで白い波や雲の上に浮かんでいるかのような、息をのむほど美しく、そして力強い空間がそこに作り出されていた。
高い位置から感情を込めて歌い上げるチャ・ジヨンの存在感は圧倒的だ。天を見上げ、空へ突き抜けるような圧巻の歌声を響かせる。歌声がクライマックスを迎えた後も、映画のラストシーンを思わせる神々しい雰囲気の中、彼女は両手を一度大きく広げてから下に下ろし、そして最後に右腕を勢いよく天へと突き上げて力強く、劇的な幕引きを決定づけた。
後方では、白い衣装のバックダンサーたちが大韓民国の国旗を誇らしげに掲げてステージを彩る。トップアーティストにふさわしい圧倒的なエネルギーに、会場からは割れんばかりの拍手と大歓声が巻き起こった。チャ・ジヨンは感謝を込めて、客席の3方向へそれぞれ丁寧にお辞儀をし、最高のステージを締めくくった。
投稿:2026年7月4日(土)
シンガープロ 安藤秀樹
